街のねどこ Kinsui
- Location :
- 兵庫県豊岡市城崎
- Type :
- 旅館
- Completion :
- 2014年7月
- Photo :
- Ota Takumi
竣工した姿は当初の依頼である「木造3階建の本館の客室改装」から随分と違ったものとなった。クライアントが我々が行ったリサーチにより顕在化した諸問題の改善を決断したからである。施設には細い路地を挟んでRC造4階建の別館があり、本館とは地下通路を介してつながっている。この建物構造が問題の根源となっていた。提案したのは、部屋食をやめてダイニングを設けること、別館の業態を変えることである。
別館は「素泊まり専門の宿」として生まれ変わった。裏路地に面しているアクセスの悪さや外国人客の増加という要素から「素泊まり」というアイデアは初期から出ていたが、決定づけたのは「駅が玄関、道路が廊下、旅館は寝室、外湯が風呂」という城崎の街のコンセプトである。限られた滞在時間を宿の外での体験に費やしてもらい、街のファンを増やすことを目的とした。客単価の低下は、一室あたりの面積を小さくし、室数を増やすことで対応した。空間は小上がりの寝床で空間を分節して狭いながらも奥行きを感じられるようにした。床材にも合板を使うなどローコストにも努めている。